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経営を安定化する会社の借入限度額の決め方 – 月商・利益から適正額を算出

2024/09/22会社の法則・ルール

はじめに

企業経営において、適切な借入限度額を把握することは非常に重要です。借入金が過剰になれば返済負担が大きくなり、経営を圧迫するリスクがあります。一方で、借入金が不足すれば、必要な資金を調達できず、事業機会を逸することになります。そのため、会社の実力に応じた適正な借入限度額を設定し、バランスの取れた資金計画を立てることが不可欠なのです。

借入限度額は金融機関や信用保証協会などによって異なる基準で判断されますが、一般的には月商や年商、税引き後利益、キャッシュフローなどの財務指標を総合的に勘案して算出されます。本記事では、会社の借入限度額を決める際の重要ポイントと、具体的な計算方法について分かりやすく解説します。

借入限度額の重要性

借入限度額は、企業が外部から調達できる資金の上限を示す指標です。適切な借入限度額を設定することで、様々なメリットが期待できます。

経営の安定化

過剰な借入れは返済負担を高め、キャッシュフローを圧迫する原因となります。しかし、借入限度額を意識した融資活用により、返済計画を立てやすくなり、経営の安定化が図れます。

特に中小企業においては、資金繰りの悪化が経営破綻の大きな要因となっています。借入限度額の範囲内で資金調達を行えば、無理のない返済計画が立てられ、安定経営に繋がります。

機会損失の回避

一方で、借入金が不足していれば、必要な資金を調達できず、事業機会を逸してしまう可能性があります。新規事業への投資やM&A、設備投資など、成長のための機会を確実に捉えるには、十分な借入限度額が必要不可欠です。

借入限度額を適切に設定しておけば、タイミングを逃さずに資金を調達でき、チャンスロスを回避できます。成長投資への機動的な対応が可能になるのです。

信用力の維持

借入限度額は金融機関からの与信判断に大きく影響します。無秩序な借入れを繰り返せば、金融機関から企業の信用力が低いと見なされ、今後の融資が困難になる恐れがあります。

一方、適正な借入限度額を守り、計画的な返済を行えば、企業の信用力を維持できます。金融機関からの継続的な支援を受けられ、資金調達の選択肢が広がるでしょう。

借入限度額の判断基準

会社の借入限度額は、金融機関や信用保証協会などによって様々な基準で判断されています。主な基準としては以下のようなものがあります。

月商・年商ベース

月商や年商から借入限度額を算出する方式です。一般的な目安としては、月商の1〜6倍程度が融資の上限とされています。この方式は運転資金の借入金が適正かどうかを判断する際に利用されることが多く、月商が大きいほど借入限度額が高くなります。

月商 借入限度額(目安)
100万円 100万円〜600万円
500万円 500万円〜3,000万円
1,000万円 1,000万円〜6,000万円

ただし、業種や収益性、成長性なども考慮されるため、一律の基準はありません。月商が同じでも、業績の良い会社ほど高い限度額が設定されることが多いです。

税引き後利益ベース

会社の税引き後利益を基準に借入限度額を算出する方式です。単純計算では、税引き後利益の10倍程度が融資の上限とされています。返済能力が直接的に反映されるため、金融機関からの融資審査で重視される指標の一つです。

例えば、税引き後利益が500万円の会社なら、借入限度額は5,000万円程度が目安とされます。利益が大きいほど借入限度額は高くなり、利益が少ないと限度額も低くなります。

キャッシュフローベース

会社のキャッシュフローから借入限度額を算出する方式です。フリーキャッシュフローや減価償却費控除後のキャッシュフローなどを参照し、返済可能額を推計して限度額を設定します。

一般的には、キャッシュフローの5〜10倍程度が融資の上限とされています。例えば、フリーキャッシュフローが500万円なら、借入限度額は2,500万円〜5,000万円が目安になります。キャッシュフローが豊富な会社ほど高い限度額が設定されやすくなります。

借入限度額の具体的な計算方法

ここでは、日本政策金融公庫や信用保証協会が用いている主な計算方法をご紹介します。これらは借入限度額の目安を算出する際の参考になります。

月商の倍数方式

会社の月商に一定の倍数(通常1〜6倍程度)を乗じることで、借入限度額を算出する方法です。月商が大きいほど上限額が高くなります。

例えば、月商が300万円の会社の場合:

  • 月商の3倍: 300万円 x 3 = 900万円
  • 月商の6倍: 300万円 x 6 = 1,800万円

月商が大きいほど高い限度額が設定されますが、一概に月商の倍数は決められておらず、業種や収益性なども加味されます。

税引き後利益の倍数方式

会社の税引き後利益に一定の倍数(通常5〜10倍程度)を乗じることで、借入限度額を算出する方法です。利益が大きいほど限度額が高くなります。

例えば、税引き後利益が500万円の会社の場合:

  • 税引き後利益の5倍: 500万円 x 5 = 2,500万円
  • 税引き後利益の10倍: 500万円 x 10 = 5,000万円

収益性が高く、返済能力がある会社ほど高い限度額が設定されます。ただし、この方式だけでは十分ではなく、他の指標も考慮されます。

キャッシュフローの倍数方式

会社のキャッシュフロー(営業CF、FCF、減価償却費控除後CFなど)に一定の倍数(通常5〜10倍程度)を乗じることで、借入限度額を算出する方法です。

例えば、営業CFが1,000万円の会社の場合:

  • 営業CFの5倍: 1,000万円 x 5 = 5,000万円
  • 営業CFの10倍: 1,000万円 x 10 = 1億円

キャッシュフローの方が利益よりも実態に近いとされ、金融機関の審査でも重視されます。キャッシュフローが大きいほど高い限度額が設定されます。

業種別の借入限度額の特徴

業種によっても借入限度額の傾向は大きく異なります。ここでは、代表的な業種における借入限度額の特徴をご紹介します。

製造業

製造業は設備投資の必要性が高いため、金融機関から比較的高い借入限度額が認められる傾向にあります。ただし、資金需要のピークと離れると限度額が下がることもあります。

製造業の場合、以下の点が重視されます。

  • 製品の市場性・付加価値
  • 生産設備の稼働状況
  • 有利子負債の水準
  • 自己資本比率

小売業・卸売業

小売業・卸売業は運転資金の需要が大きいため、月商を重視した借入限度額の設定がなされます。利益率が低い分、月商の5〜6倍が融資の上限になることが多いです。

以下の点が重視されます。

  • 商品の回転率
  • 在庫管理の状況
  • 与信管理・債権管理の状況
  • 店舗運営の効率性

サービス業

サービス業は業種が多岐にわたるため、一概に言えませんが、概して資金需要が小さいことから、借入限度額も製造業や小売業に比べて低めに設定される傾向にあります。

以下の点が重視されます。

  • サービスの特殊性や付加価値
  • 人材の確保状況
  • 経常利益の水準
  • キャッシュフローの安定性

まとめ

会社の借入限度額は、経営の安定化、機会損失の回避、信用力の維持など、企業経営にとって非常に重要な意味を持ちます。月商、税引き後利益、キャッシュフローなどの財務指標から借入限度額が算出されますが、業種や収益性、成長性なども考慮されます。

借入限度額は会社の成長機会や将来性を左右する重要な要素です。適切な限度額の設定と、それに基づいた計画的な資金調達が何より重要なのです。金融機関や専門家に相談しながら、自社に最適な借入限度額を見極めていきましょう。

よくある質問

借入限度額はどのように決められるのですか?

企業の月商、税引き後利益、キャッシュフローなどの財務指標をもとに、金融機関や信用保証協会など様々な基準で判断されます。例えば月商の1〜6倍程度、税引き後利益の5~10倍程度、キャッシュフローの5~10倍程度が目安とされています。ただし、業種や収益性、成長性なども考慮されるため一律の基準はありません。

企業にとって借入限度額の設定は重要なのですか?

はい、非常に重要です。適切な借入限度額を設定することで、経営の安定化、事業機会の逸失回避、金融機関からの信用力維持などの様々なメリットが期待できます。過剰な借入れは返済負担を高めますが、一方で借入金が不足すると必要な資金調達ができず、事業機会を逸してしまう可能性があるため、バランスの取れた資金計画が重要です。

業種によって借入限度額はどのように異なるのですか?

業種によって特徴が異なります。製造業は設備投資の必要性が高いため比較的高い借入限度額が認められます。小売業・卸売業は運転資金の需要が大きいため月商を重視した設定がなされます。一方、サービス業は資金需要が小さいことから、他業種に比べると低めに設定される傾向にあります。

自社に最適な借入限度額はどのように見極めればよいですか?

金融機関や専門家に相談しながら、自社の財務指標や業界動向、将来性などを総合的に勘案して判断する必要があります。適切な借入限度額を設定し、それに基づいた計画的な資金調達を行うことが何より重要です。