2024/04/07会社の法則・ルール
はじめに
新規事業の立ち上げは、企業にとって大きなチャンスとなる半面、リスクも高くつきまといます。事業が軌道に乗らず赤字が継続した場合、会社の経営に深刻な影響を及ぼします。そのため、新規事業を開始する際には、あらかじめ事業撤退の基準を明確に定めておくことが極めて重要です。本記事では、事業撤退の基準設定について、さまざまな観点から掘り下げていきます。
定量的な指標を設定する
事業撤退の基準を設ける際の一つの方法は、定量的な指標を設定することです。具体的には以下のようなアプローチが考えられます。
KPIやKGIによる評価
事業の目標達成度を測る指標として、KPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)を設定し、一定の水準を下回った場合に撤退を検討します。例えば、Webサービスの場合はPV数やユーザー数、アプリの場合はダウンロード数やセッション数などの指標が参考になります。
損益分岐点やキャッシュフローを基準に
新規事業の収支状況や資金繰りを見極める際は、損益分岐点の売上高やキャッシュフローを基準にするのが有効です。DeNAでは「1000万円を元手にサービスを始め、キャッシュアウトのタイミングで事業継続可否を判断する」という手法を採用しています。
ただし、売上高に関連しない費用(減価償却費や広告費など)の扱いが難しいため、過度に保守的な撤退判断につながる可能性もあります。そのため、キャッシュフローの見通しも併せて検討する必要があるでしょう。
投資回収計画の進捗状況を追跡
新規事業に投下した資金の回収スケジュールを立て、その進捗状況を継続的に追跡することも撤退基準の一つです。計画通りに投資が回収できないペースであれば、撤退を検討する材料になります。
事業の初期投資額が大きい場合は特に、投資回収の見通しを慎重に立てる必要があります。また、単なる売上目標だけでなく、プロジェクト全体の収支を考慮に入れることが肝心です。
定性的な評価基準を組み合わせる
数値目標のみに頼らず、定性的な観点からも総合的に判断することが求められます。新規事業は不確実性が高いため、状況の変化に応じて柔軟な対応が必要だからです。
市場動向や競合状況の変化を注視
新規事業の継続可否を見極める上で欠かせないのが、外部環境の変化への敏感な対応です。市場の成長性、ユーザーニーズの変化、競合他社の参入動向など、様々な要因を常に注視する姿勢が重要です。
例えば、事業を立ち上げた当初は有望な市場であったものの、後に競合が台頭し自社の優位性が失われてしまった場合は、撤退を検討する材料になるでしょう。今後の成長見通しが芳しくないと判断できれば、無理に継続する必要はありません。
自社の強み・弱み、リソース状況を検証
事業の継続可否を判断する際は、自社の強みや弱み、現有のリソースを冷静に分析することも欠かせません。SWOTなどの手法を用いて、自社の競争力を客観視することが重要です。
新規事業にリソースを投入し続けても、差別化できないサービスしか生み出せないのであれば撤退を検討すべきです。逆に、自社の持つ強みを最大限に活かせる事業分野であれば継続する価値があるといえるでしょう。
事業の位置付け、戦略との親和性を再確認
新規事業の立ち上げは、通常の既存事業とは大きく異なる前提に立っています。短期的な業績のみを追うのではなく、中長期的な視点に立った戦略的な判断が求められます。
事業の位置付けや、会社の中期経営計画との親和性を再確認し、長期的な成長戦略の中で意義があるかどうかを検証する必要があります。単なる数値目標のみでなく、事業の存在価値そのものを問い直すことが重要なのです。
まとめ
新規事業の撤退基準を適切に設定するためには、定量的な指標と定性的な評価を組み合わせて総合的に判断する必要があります。KPIやキャッシュフロー、投資回収計画といった数値目標のみに頼らず、市場動向の変化や自社の強みといった定性的な要素も考慮に入れる必要があります。撤退はあくまで事業の「終了」を意味するものではありません。撤退を機に得た経験や知見を活かし、次の成長に向けた布石とすることこそが重要なのです。状況に応じて柔軟に対応しながら、適切な撤退の判断ができるよう、事前の準備を怠らずに取り組むことが求められます。
よくある質問
新規事業の撤退基準を設定する際の重要なポイントは何ですか?
新規事業の撤退基準を設定する際には、定量的な指標と定性的な評価を組み合わせて総合的に判断することが重要です。KPIやキャッシュフロー、投資回収計画といった数値目標に加え、市場動向の変化や自社の強みといった定性的な要素も考慮に入れる必要があります。撤退の判断は状況に応じて柔軟に行う必要があるため、撤退の準備を事前に行うことが求められます。
新規事業の撤退基準を定量的に設定する方法には何がありますか?
新規事業の撤退基準を定量的に設定する方法として、KPIやKGI、損益分岐点、キャッシュフロー、投資回収計画の進捗状況などを活用することが考えられます。例えば、Webサービスの場合はPV数やユーザー数、アプリの場合はダウンロード数やセッション数などの指標が参考になります。これらの数値目標を設定し、一定の水準を下回った場合に撤退を検討するといったアプローチが有効です。
定性的な評価基準を組み合わせるメリットは何ですか?
数値目標のみに頼るのではなく、定性的な観点からも総合的に判断することが重要です。新規事業は不確実性が高いため、市場動向や競合状況の変化など、外部環境の変化への敏感な対応が求められます。また、自社の強みや弱み、リソース状況を冷静に分析し、事業の位置付けや戦略との親和性を再確認することも欠かせません。このように定性的な評価基準を組み合わせることで、より適切な撤退判断を行うことができます。
撤退は事業の終了を意味するのですか?
撤退は必ずしも事業の終了を意味するものではありません。むしろ、撤退を機に得た経験や知見を活かし、次の成長につなげることが重要です。状況に応じて柔軟に対応しながら、適切な撤退の判断ができるよう、事前の準備を怠らずに取り組むことが求められます。新規事業の撤退は、次なる成長に向けたチャンスと捉えることができるのです。