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事業売却の極意!後継者不在から新規事業投資まで知っておくべき全手順
目次
はじめに
事業を売却することは、経営戦略上の重要な決断の一つです。事業売却には様々な目的やメリット、デメリットがあり、自社にとって最適な選択肢を見極める必要があります。本記事では、事業売却の具体的な手順やポイントを解説していきます。
事業売却の目的
事業売却を検討する際、まず自社の目的を明確にすることが重要です。一般的な目的としては以下のようなものが挙げられます。
事業承継
経営者が高齢化し、後継者不在の場合、事業を第三者に売却することで事業の継続を図ることができます。事業売却を通じて、従業員の雇用を守り、取引先との信頼関係を維持できるメリットがあります。
また、事業承継のタイミングを逃さず、事業が好調な時期に売却することで、より高い価格で売却できる可能性があります。
ポートフォリオの転換
自社の経営資源を主力事業に集中させるため、非主力事業を売却することがあります。事業ポートフォリオを再編することで、経営効率の向上を図ることができます。
また、売却資金を新規事業への投資に充てることもできます。事業売却により得た資金を活用して、成長分野への進出を図ることができるのです。
事業再生
赤字が続く非優先事業を売却することで、経営の立て直しを図ることができます。不採算事業から撤退し、資金を主力事業に集中させることで、経営の効率化を実現できます。
また、買収企業により事業を継続させることで、従業員の雇用と取引先との関係を維持することも可能になります。
事業売却の手順
事業売却を実施する際の一般的な手順は以下の通りです。
売却の目的と戦略の設定
事業売却の目的を明確にした上で、売却戦略を立案します。売却対象、売却範囲、希望価格、売却時期などについて方針を定めます。この戦略に基づいて、以降の手順を進めていきます。
また、M&Aアドバイザリー会社などの専門家に相談し、適切なアドバイスを得ることが重要です。
売却先候補の探索と交渉
次に、売却先候補企業を探索し、基本条件について交渉を行います。候補企業は業界関係者に打診したり、M&Aデータベースを活用したりして見つけます。
候補企業と基本条件について合意に達すれば、基本合意書を締結します。ここで、秘密保持義務や対象事業の範囲、譲渡価格の概算値などが明記されます。
デューデリジェンスの実施
基本合意書締結後は、買収側による詳細な調査(デューデリジェンス)が入ります。売却側は財務・法務・人事・環境などの各種データを開示し、買収側はそれらを精査します。
デューデリジェンスの結果を踏まえて、最終条件について再交渉を行います。この段階で、譲渡価格や株式対価の割合、従業員の取扱いなどを詰めていきます。
最終契約と引継ぎ
最終条件で合意に達したら、事業譲渡契約書に署名し、契約を締結します。契約締結後は、対象事業の引き渡しや従業員の移籍手続きなどを進めていきます。
引き継ぎ期間中は、買収側への事業運営のサポートを行う必要があります。そのため、一定期間は売却側の経営陣が関与し続けることになります。
事業売却のメリット・デメリット
事業売却には、売却側と買収側の双方にメリットとデメリットがあります。主なポイントは以下の通りです。
売却側のメリット
- 事業の継続と雇用の維持が可能
- 経営資源の主力事業への集中が可能
- 売却資金を新規事業に投資できる
- 株主への売却益の還元が可能
売却側のデメリット
- 一定期間の競業避止義務がある
- 売却後の事業に制限がかかる可能性がある
- 従業員の士気の低下が懸念される
- 手続きが複雑で時間を要する
買収側のメリット
- 事業の一部のみを取得でき、リスクが低減できる
- 買収コストが株式取得より低額となる場合がある
- 税制上の優遇措置を受けられる可能性がある
買収側のデメリット
- 事業の引き継ぎに時間と手間がかかる
- 売却側の協力次第で事業運営に影響が出る
- 負債の引き受けや従業員の雇用維持が必要になる場合もある
事業売却の価格算定
事業売却における適正な価格算定は非常に重要です。売却価格の水準次第で、双方の利益が大きく変わってくるためです。一般的な事業価値の算定方法は以下の通りです。
時価純資産価値法
事業に係る資産から負債を控除した時価純資産額を基礎として、事業価値を算出する方法です。簡便な一方で、将来の収益力を反映できないデメリットがあります。
マルチプル法
事業の売上高や営業利益などに、業界の平均倍率を乗じて事業価値を算出します。業界動向を反映できるメリットがある一方、倍率の設定が難しいデメリットがあります。
指標 | マルチプル倍率の目安 |
---|---|
売上高 | 0.5倍 ~ 2倍 |
営業利益 | 3倍 ~ 10倍 |
DCF法(割引キャッシュフロー法)
事業から将来生み出されると見込まれるキャッシュフローを現在価値に割り引いて合計し、事業価値を算出します。将来収益を反映できるメリットがありますが、割引率の設定が難しいデメリットがあります。
年買法
時価純資産額に、ある一定年間分の営業利益を加算して事業価値を算出する方法です。実務で広く用いられており、利用しやすいメリットがあります。一方で、単年度の利益変動に左右されやすいデメリットがあります。
事業価値 = 時価純資産額 + 営業利益 × 年数(通常2~5年)
まとめ
事業を売却する際は、まず目的を明確にし、十分な準備を行うことが重要です。適切な売却先を見つけ、デューデリジェンスを経て最終条件を詰めていく必要があります。また、従業員への影響や競業避止義務など、様々な観点から検討する必要があります。
事業売却には売却側と買収側の双方にメリット・デメリットがあり、それらを十分に理解した上で最善の選択肢を検討しましょう。価格算定においても、複数の方法を用いて適正な事業価値を算出することが求められます。
事業売却は経営判断として極めて重要であり、M&Aアドバイザーなどの専門家に適切なアドバイスを求めながら、慎重に検討を重ねていく必要があります。
よくある質問
事業売却の目的は何ですか?
事業承継の課題、ポートフォリオの転換、事業再生など、様々な目的があります。事業の継続、経営資源の集中、新規事業への投資など、自社にとって最適な選択肢を見極める必要があります。
事業売却の具体的な手順は何ですか?
売却の目的と戦略の設定、売却先候補の探索と交渉、デューデリジェンスの実施、最終契約と引継ぎなど、段階的に進めていきます。専門家のアドバイスを得ながら、慎重に検討を重ねることが重要です。
事業売却にはどのようなメリットとデメリットがありますか?
売却側は事業の継続や経営資源の集中、売却資金の活用などがメリットとなりますが、競業避止義務や従業員への影響などがデメリットとなります。一方、買収側は事業の一部取得によるリスク低減や税制上の優遇が得られる可能性がありますが、事業引継ぎの負担もあります。
事業価値の算定方法にはどのようなものがありますか?
時価純資産価値法、マルチプル法、DCF法、年買法など、複数の手法があります。それぞれに長所短所があり、適切な方法を組み合わせて事業価値を算出することが求められます。